Vol.101 e スポーツ(ゲーム)という名の「新・金融カテゴリー」

MAD MAN Monthly Report Cover-5


4月号の目次>

e スポーツ(ゲーム)という名の「新・金融カテゴリー」

◎ リテール店舗のお手本「Walmart」の矛先転換

◎【起点観測】イーロン・マスク氏の「X」


◎【起点観測】NYTの数字からみえる水平マネタイズの今後

◎【コラム】Amazonのテレビ広告の目的

◎【コラム】Bed Bath & BEYOND のオモテウラ


eスポーツ(ゲーム)という名の「新・金融カテゴリー」

MAD MANレポート用語の「軽いデータ」側のビジネスのなかで、「大きく化ける」と考えている本命の一つがゲームの分野だ。この「ゲーム(GAME)」の意味合いをかなり広く捉えて、eスポーツや課金(報酬)から派生する「B2B金融」が大きく作用する分野としてみる。「軽いデータ」側だけれど、B2Bで積み上げれば「重いデータ」側と垂直につながる、という意味だ。

すでに、このゲーム分野は人々の可処分時間のなかの大きな部分を占有しているのはお気づきの通りだ。調査データに示されるまでもなく、スマホの接触時間が2時間〜/日(!)というのもMAD MANレポート読者として実感があろう。歩きスマホや通勤時間、ベッドの中などの「ながら」の時間にも割り込み、容易に拡張し続けている。

このスマホ接触時間の内訳は、YouTubeに代表される「SNSアプリ」が幅を利かせるだけではなく、「モバイルゲーム」が侵食しているのではないだろうか。リビングでのスマートTVの大画面やコンソールゲームを含めて、ゲーマーさんだけに閉じた話題ではなく、子ども、家庭(夫、妻)、年配者(おじいさん、おばあさん)、世界中にスマホを軸にしたゲームの広がりはすでに巨大市場に達している。

図1は、「一週間あたりスマホゲームに使う時間」に関する統計だが、このデータさえ参考情報のうちのほんの一つに過ぎず、データを鵜呑みにせずにジブンの肌感を取り入れて消化したい。日本市場で同様の「スマホゲーム利用時間」データも確認してみると、なにやら日本で公表されているゲーム接触時間は肌感より過小な数字ばかりだが、いかがだろう。読者も自身で幾つか確認されるのをオススメする。

図1の米国のデータは、かなり肌感に近いものとして掲載した。「約1割の人が週に20時間以上(ヘビーに)使っている」、「約4割の人が週5時間以内(毎日1時間程度使っている)」。

たとえば、通勤時での電車・駅では(肌感で)8割の人がスマホ画面を見ているとして(7割か6割かどうかは置いておいて)、そのうちの何割かがSNS、何割かがゲームを楽しんでいる。数値が大事なのではなく、その量の多さが2~3年で激増している可能性を考えると、ゲームが「生活の一部」や「生活の入り口」として侵食している割合が増えているかも(という人たちが増えているよね)、と感じておきたい。

■「生活がゲーム」になる未来の可能性

考えるヒントとしては、その「現在の外側」で動いている環境だ。

「Roblox」や「Candy Crush」などの“今の”ゲームや「ニンテンドー」、「プレステ」などのコンソール基盤、「あつ森」などの日本に閉じている“慣れ”の事業発想の外側で考える。「ゲーマーの人口が○○億人」とか、「ゲームの需要や産業が伸びている」という思考すら外側ではなく、現状の内側からの延長に過ぎない。

外側のたとえ話としては、「Microsoft OfficeのアプリやExcelの関数機能こそがゲーム・プラットフォームだ」とか、「野球のオオタニ選手の2世が、白球とバットの野球を越えたeスポーツの世界で40億人のファンを生みだす」とか、「企業ブランディング」の投資先として旧来の競技場でのオリンピックやそのテレビ放映での投資から、国境や過去の文化(野球=米国、柔道=日本など)を越えたeスポーツ上でのライブ種目が成長するのも間もなくだ。そのeスポーツとしての国際機構が「ワールドカップ」としてオンライン上で放映される発展例も間近だと思える。Candy Crushや旧来のゲーム(コンソールやソフト)とは関係ない世界が外側ということでご紹介した。

一例として、eスポーツで芽生えている賞金ランキング(選手契約料の夜明け)をグローバルで並べてみる(図2参照)。すでにジェネレーションZ世代を越えた「α(アルファ)世代」が賞金獲得選手として突出している。日本は「ゲーム産業王国(ゲーム産業市場は世界で第三位)」のはずが、ここでは「欄外」になっている様子(目に見えてない状況)を見ておこう。

<図2の補足解説>

  • 上位プレーヤーは10億円規模(700万ドル)〜50位は3億円規模(200万ドル)
  • 集計の時間軸は年間ではなく「累計(集計)」、直近365日区切りでの額は上位で1〜2億円規模
  • 上位50位に日本のプレーヤーは見当たらない(日本の最上位は103位に$1,228,551=1.5億円規模)
  • このリストには中国と米国のプレーヤーが多く見られる


■金融の世界で芽生えている
eスポーツの賞金やブランド・スポンサード

このコラムの予想が当たるか(!)よりも、現在「見えていない」部分に気づきさえすればカンタンに成長できる「伸びしろがある」こととして紹介している。

図2は単なるゲームの賞金ランキングとして見るのではなく、これまでのスポーツと同様、上位に名を連ねる人(プレーヤー)には素養や独自の目線が含まれているはずであって、旧スポーツ創世記の「マイケル・ジョーダン」がこのeスポーツやゲームのランキング中に含まれているとするならば、とでも想像してみよう。

この上位ランキングのプレーヤーは、これまでのスポーツと同様に「幼少期からのトレーニングや機材への投資」、「運動能力だけでなく精神面の素養」、「人気を集めるブランド力」、「日々の生活でも結果を求められる」、「将来的な技術資産の継承のリーダーになる」という家族の底力の部分に注目しておきたい。現在の「かっこいい」とされる選手は、Output・Outcomeの結果に過ぎない。

さぞかし親御さんの支援や通学していた学校での環境(有名進学校に行く、有名スポーツ学校の推薦をもらうのと同じ作用)があっての上位ランキングの方々と想像する。

単なる「得点・偏差値」、「学歴」、「メダルの数」という、過去の競技的な「高数値の獲得」の意味合いすら超えた向こう側のゲームルールがありそうだ。

MAD MANレポート上で「ゲーム」と称するカテゴリーでのユーザーは、旧来の「消費者ゲーマー」の意味合いではない。ゲームのような感覚で旧来の日々の生活、お仕事がオンライン上での「生活や仕事」として資産価値を形成していく。あたかもゲーム(人生)のように境界線を塗り替えていく、ゲームの「アップセル」のイメージだ。

eスポーツ選手の資金上位は中国・米国・韓国・ロシア

オリンピックの要領で、図3の国別集計ランキングを見てみよう。ゲーム産業の市場ランキングでは日本が3位だが、eスポーツ選手の賞金ランクでは、中国・米国・韓国・ロシアがリードして日本は14位だ。(参考:https://www.esportsearnings.com/countries

賞金獲得の集計では、300億円規模で中国・米国が上位2強となっている(賞金獲得プレーヤーが人口14.1億人の中国で7,000人に対し、人口3.3 億人の米国では24,000人と市場を作るマグマの存在だ)。続いて、韓国・ロシアが100億円規模となっている(プレーヤー5,000人規模)。

日本は40億円規模(プレーヤー3,000人)であり、韓国の4分の1、米国や中国の15%ほどのサイズである。ゲーム市場における日本のこの状態は良いとかワルイではなくて、何かすっぽり抜け落ちていることを感じておきたい。

■「ゲームという生活」の入り口の向こう側

現在の日本のSNSやゲーム上の「軽いデータ側」における匿名主義は、自由奔放な「別のワタシ」が出せる一面がある。しかし、今後医療や金融の「重いデータ側」と結びつくことを前提にした筆者の仮説では、「匿名でのアソビ」は信用(信頼)の算出に計上できないので、「負の資産」として足かせになる(個人データを公開、預けるかどうかは個人の自由)。

たとえば、ゲームによる生活の向こう側(近未来)は、デジタル起点で日々のスマホで1時間触っているゲームが窓口となり、「医療が安くなるよ・保険が受けられるよ・賞金受理や支払いができるよ・免税控除があるよ」などの登録のフックが個人(マイナンバー)と紐付いて、確定するプロセスに進む。これは決してオレオレ詐欺的なお誘いではなく、正々堂々とゲームが裾野、間口を・・・


続きはMAD MANレポートVol.101(有料購読)にて


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