Vol.100「非財務情報」というデータ・コミュニケーション

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「非財務情報」というデータ・コミュニケーション

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「非財務情報」というデータ・コミュニケーション

 

見えにくい数字である「非財務情報(Non-financial information)」を可視化させる、何やらむずかしそうなデータについての話題だ。

MAD MANレポートは、「見えにくい」部分にスポットを当てて読者と共に思考のキャッチボールをおこなっている。対照的に、「見えている部分」はテーマとして取り上げずにスルーしていることから、話題の偏りがある。たとえば、メディアを毎日賑わせる「エンタメ・スポーツ・ファッション」の話題についてMAD MANレポートで取り上げていないのは、読者も感じるところだろう(日本代表のWBC優勝おめでとうございます)。

今月号では、特別に目に見えている側の話題から企業活動で重要視されている「ESG・SDGs」分野について、経営の視点で(ふんわりと)紹介する。


■非財務情報の開示とは

財務データも含めた社会に対する企業の意志の見せ方を、企業の社会に対するコミュニケーションという視点で捉え、非財務情報の開示を(これぞ)データ・マネジメントとして捉えた。

すでに、財務監査事業を持つ4大ファームの「Deloitte・PwC・KPMG・EY」に「Accenture」や「IBM」らが加わり、コンサルティングファームが旧来のIRやPRの領域にまで事業を広げ、成長しつつある。コミュニケーション・エージェンシーとして牙城を築いてきた電博を筆頭とする事業者が「侵食」されている領域でもあり、かつ、強い圧力で成長している市場だ。ブランド事業主も、包括的にデータを管理できる企業へと付き合う企業が変化していく。

「(現在のままでは)データ開示が不十分だ」、「データ開示はどうあるべきか」、「解決すべき課題は」とデータ開示の需要が煽られている。この流れの圧力の向こう側には、上場企業が逆らえない「トレンド」がある。(参考:「非財務の情報開示」国際基準は大きなチャンスに|Forbes Japan 2023年1月14日)
※日本での「非財務情報の開示」議論の「芽生え」は、2018年の金融審議会「ディスクロージャー・ワーキンググループ(WG)」の頃から準備され、20203月期の有価証券報告書から、非財務情報である記述情報の「充実」が求められはじめた。規制化はまもなくのシグナルだ。

■非財務情報の課題をChatGPT-4に聞いてみた

「非財務情報の課題は何か」という基礎情報は、MAD MANレポート読者自身の学習課題としつつ、下記の質問を「ChatGPT-4」に投げかけてみた。

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筆者の質問:
「非財務情報」に関する、問題点や課題について教えてください。非財務情報についてすでに基礎的な事は知っているので、知識者に対しての注意や警告にフォーカスした指摘として「である」の語調でまとめてください。含んで欲しい事例としては、DeloittePwCAccenture、電通などです。 

ChatGTP-4の回答
非財務情報に関する問題点や課題、について、デロイト、PwC、アクセンチュア、電通などの事例を含めて説明する。

第一に、非財務情報の取り扱いにおいて、社内の体制整備が困難であることが課題となっている[3]。非財務情報に関連する事項を所管する部署が同一ではない場合が多く、情報の取りまとめや社内の体制を整備することが難しい。デロイト、PwC、アクセンチュア、電通などの企業も、この問題に対処するために、非財務情報の開示をトップダウンで推進できるマネジメント本部を設けたり、サステナビリティ委員会やマネジメントリスク委員会などといった非財務情報の取りまとめを行う委員会の役割を明確にすることが求められている[3]

第二に、非財務情報の定量化の分析やデータの測定方法が各セグメントで異なるため、社内全体としてのデータを統合することが難しい[3]。企業間での比較も困難となり、デロイト、PwC、アクセンチュア、電通などの企業も、非財務情報の測定方法や指標について統一的な基準やガイドラインが整備されることが望まれている。

第三に、非財務情報の開示は必ずしも定量的である必要はないが、企業が将来どのような価値を創造し、環境・社会にどのような影響を与えるのかをわかりやすくステイクホルダーに伝える必要がある[3]。企業によって長期戦略とサステナビリティ推進の関連性は異なるため、自社の重要課題(マテリアリティ)を特定し、柔軟性の高い開示を実施することが重要である。
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何やら大学の課題に対して提出するレポートの様相だ。

■企業コミュニケーションの範囲が広告・PRIRを越えて「地球」へ

非財務情報(データ)を事業領域として捉えたときに、筆者からみると、旧来の「手作業」でステークホルダー(顧客・株主・社員・取引先・社会など)と円滑なコミュニケーションを請け負っていたIRやPRの専門エージェンシーや広告代理店の投資資本力は小さく、この領域にまで市場を広げられていない。この非財務情報(とやら)のデータの扱いは、デジタル集計のシステム投資(DX投資)が起点にある。システム導入が納品成果物となれば、グローバルで資本を持つ4大ファームやコンサル企業に分がある。

これらの事業コンサル企業は、「自社開発したメソッド」と「システムを納品する(アドオンする)」というサブスクモデルを外販すれば、「さもあらん(まあ、こんな感じでしょ)風」の需要が高まり、受注を広げられる。その結果、発注する側のブランド企業にとっては、安易に踏み出せない金額規模にまで進んでしまう。

■個人情報(データ)保護の動きより強いシグナル

GDPRやCCPAの指摘から、マーケティングや広告の事業目線で話題となった「個人情報(データ)を大切にする」という視点はあるものの、異議申し立てをする側が企業より弱い立場の「個人」であるだけに、その対応はまだまだ弱い。

これに対して、非財務情報の開示要求はグローバルで起こる「機関投資家(経済的意思決定をする人たち)」からの要求(突き上げ)により、対応への圧力も高まり、結果的に市場は巨大になる。故に企業側の対応速度も早い。要求の主体である資産サイズ数十兆〜100兆円規模のほんの数社の力が、億人単位の大衆(個人の集合体)よりも強い、とも考えられる。

 
■事業の難点こそチャンスかもしれない

非財務情報のやっかいな点は「ぼんやりしている」、「共通基準値がない」、「伝わりにくい」という情報である点だ。これを統一し、基準値を作るためにシステム導入や構築が必要になる。このタイミングこそ電博やサービスエージェンシーにとって、欠点ではなくむしろ有利な点と考えられる。

「数値化しない限り情報は伝わりにくい」との風潮が高まり、規制強化の動きに先行して気づいたのが、上記の4大ファームやコンサル企業といえる(章末にその発表リリースを並べる)。 

彼らは、「非財務情報の中から会社の『未来価値の情報』として整えることがシステム(DX)投資です」、「ブランディング(企業価値向上)につながります」と紹介している。このデータに意味づけするプロセスは、サービスエージェンシーならではの目線や得意技が発揮できるだけでなく、資本関係を含めた企業の座組まで考えれば、レバレッジさせる好転機だ。
 

■市場が必須で広がる理由

すでに機関投資家から「突つかれる」側の上場大企業は、ガバナンスを含め、非財務情報に対してなんらかの「実施した感(手応え、マテリアリティ)」を探し始めている。自己ツールと基準があれば、それが姿勢や自信として反映され、機関投資家からすれば、その企業の株式を保有し続ける確信が持てる。 

これは、企業のコミュニケーションの対象が、個人ではなく社会をも超えた「地球」を俯瞰で相手するような話題だ。産官学、さらには各国との掛け算でのコンセンサスの中で動く。非財務情報とは、既存の媒体や、SNS、スマホアプリなどが関係ない企業の「オウンド」のコミュニケーション・データの蓄積と考えてみよう。いわばESG目線でのDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)をシステムベースで構築する手段と姿勢が「企業価値の創出」につながるという概念だ。 

今後この市場が「爆発的」に広がることを予想できるのは、解釈の仕方がどんどんと広げられていくからだ(広げることが可能だからだ)。財務諸表の開示だけでは企業主体の防衛目線のみで不十分となり、「サステナビリティ情報」と定義づけされる情報の解釈は、地球を主語にして無限に膨らんでいく。

MAD MANレポートのアンチョコとしては、「タスクフォース」の単語を聞けば「自主的な開示と言っている間に準備しておけ」という合図としよう。いずれ「基準」のコンセンサスが生まれ、規制当局が数年で動き出すからだ。これまでの考え方のスイッチを切り替えてみよう。

MAD MANセレクトの資料公開

ChatGPT-4AIに聞くよりもMAD MANNI(自然脳、Natural Intelligence)に聞け」として、下記にURLを並べておく。選出した意図(インプット)は、非財務情報とやらの統合や協議が今後一層進むことが予想され、システム投資に近い側(コンサル企業)が先行している様子が窺えるからだ。その比較対象を電博として並べ、最後に欧州の様子を添えた。 



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