Vol.82 エクスチェンジ・コーポレーション社(Paidy)のステップ

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●エクスチェンジ・コーポレーション社(Paidy)のステップ

●日本での「Bコーポレーション」浸透度―「B=ベネフィット」の貴重な意味

●【コラム】運用型テレビCM「ノバセル」の市場貢献度を知る

●中国の個人情報保護法から日本企業の襟を正すことを考える

●フィンテック企業がマーケティング・クラウド企業を1.3兆円で買収する「主従関係」

①キャッシュレス、海外勢参入で激戦ペイパルが新興買収
2021年9月8日日本経済新聞
出所:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB084QA0Y1A900C2000000/
〈以下抜粋〉
米決済大手ペイパル・ホールディングスは8日、新興のペイディ(東京・港)を買収すると発表した。クレジットカードを使わない後払い決済に日本で参入する。キャッシュレス化で出遅れる日本を有望市場とみて、グーグルなど米IT(情報技術)企業による買収が続く。キャッシュレス市場を巡る競争が国内でも激しくなる。

②米決済大手、日本に本格参入ペイパルの実力は?
2021年9月8日日本経済新聞
出所:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0820S0Y1A900C2000000/

③海外勢、国内フィンテック青田買い成長性の評価に差
2021年9月9日日本経済新聞
出所:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB085AD0Y1A900C2000000/
④ペイパル引きつけたペイディ、二人三脚からのチーム経営
2021年9月10日日本経済新聞
出所:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC09EKW0Z00C21A9000000/
⑤未上場株投資、ヘッジファンド参入競合強まり過熱感も
2021年9月14日日本経済新聞
出所:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB130DV0T10C21A9000000/

■PayPalによる日本企業の買収は「事件」ではなく「設定」であること
BNPLは、GoogleやAmazonも乗り出している市場でにわかに注目を浴びているが、MAD MANレポートではこのBNPLの話題の本命は「Amazon + Affirmの型」として注目したい。このチームが波に乗る準備ができた頃にあらためてご紹介したいと考えている。
今回はいったん日本における話題として、日本で起業したPaidyがピーター・ティール氏が創業したあの米PayPalに買収されるという「できごと」は、決して「事件」ではない、という点に触れてみたい。
BNPLの「マクロ産業」カテゴリーの話題よりもまず、1つの「ミクロ企業(起業)」である、Paidy(表題のエクスチェンジ・コーポレーション)の目線を見習ってみたい。
その見地から上記の時系列で並べた記事の中から、④の切り口に注目して解説する。④の日経の記事の冒頭は下記の内容だ。
<以下抜粋>
米決済大手のペイパル・ホールディングスが買収を発表した、後払い決済サービスのペイディ(東京・港)。3月に大型資金調達を果たした際の企業価値は約1425億円と推計され、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)に仲間入りしたばかりだ。3000億円での買収という国内で異例の「ユニコーンM&A(合併・買収)」の背後には、会長と社長の二人三脚で培ったチーム経営があった。
■新しい経営者の登場とその経営者を育てた師匠
Paidyの代表取締役社長兼CEOの杉江陸(すぎえ・りく)氏は日本において有名人であろうが、その背後には代表取締役会長ラッセル・カマー氏(カナダ出身)が存在している。
少し脱線して、この二人の関係を映画「スター・ウォーズ」の登場人物で例えると、「マスター・ヨーダとルーク・スカイウォーカー」。あるいは、映画「マトリックス」で例えると、「モーフィアスとネオ」のような関係としてみた。「鬼滅の刃」ならば、「鱗滝左近次(うろこださこんじ)と炭治郎」だろうか(...ずっと続くのでこのあたりで)。
「相手を信じ、考えを伝えて、相手も自己も鍛えて高めていく」という師弟関係と、その二人が共に目指す「宇宙の星」を共に見ているようだ。これらを「師弟」と称するよりも「二人の仲間」と称する方が雰囲気が近いのだが、ここでは「教え、教えられ」の関係として「師弟」と例えておく。
下記にPaidyの会社プロフィールページより、二人の経歴を紹介する。
代表取締役会長ラッセル・カマー
メリルリンチ証券とゴールドマン・サックス証券を経て東京に株式会社Paidy(旧エクスチェンジ・コーポレーション)を設立。スタンフォード大学院数理ファイナンス修士。

代表取締役社長兼CEO杉江陸
富士銀行(現みずほFG)、アクセンチュアを経て、新生フィナンシャル代表取締役社長、新生銀行常務などを歴任。東京大学卒、コロンビア大学MBA並びに金融工学修士。


図2がPaidyの経営陣で、トップ(ラッセル・カマー氏)を筆頭に日本国にとどまらず、世界を見た布陣であるのが伺える(10名中6名が日本生まれではなさそうだ)。

図2 Paidyの経営陣一覧図2

出典:paidy.com

CMO1名だけが女性というバランスはやや気になるのだが、このCMOすらも出身国はハンガリーで日本の東大卒。そして、電通やErnst&Young(EY)やNetflixJapanを経てマーケティング分野を取り仕切っている。日本企業において、CMOがハンガリー出身(!)でニホンゴだけでなく英語もネイティブでもない、という状態を想像してみよう。

■Paidyを今から見て気づくことはすべて「後出しジャンケン」

「後払い」は新しいことではない。支払い能力の低い学生にファッション・アパレルを提供する、「マルイの分割払い」は1980年代のバブル時代から存在していた。クレジットカードを介在しない「後払い決済」は、和製でも図3のように多数存在する。むしろ、イオンやセブンイレブンなどの大手が参入していないことを不思議に感じた方がよい。

図3日本の後払い決済の事業リスト(サービス開始時期の降順)図3

出典:Wikipedia「後払い決済」

次に、Paidyがこれらの「和製」サービスと目指している方向(星)や目的が違うことを感じさせるのが図4だ。

■辿っている道跡を探すよりも目指したい「星」はどこか

図4の「出資企業」には、図3や他の日本のスタートアップとは「毛並みの違う」何か、特徴が見受けられる。「日本で育ってから次に海外進出」という順序ではないのが伺える。例えるなら、「山梨の登山口から富士山登頂を目指す」のか、「カトマンズからシェルパを率いてエベレストを登る」のかは、その準備やスタート地点がすべて違うようなイメージだ。

  1. 伊藤忠:2020年2月のラウンドC時点で累計約100億円(分母は640億円)の出資
  2. PayPal:今回の100%株式取得社
  3. VISA:2018年の時点でGoldman Sachsと共に資本注入をした最初の外資の1つ
  4. Goldman Sachs:会長ラッセル・カマー氏がトレーダーとして元勤め先
  5. 日系3社:必須、設備投資への融資枠
  6. 新生銀行:杉江CEOは元新生銀行の社長
  7. Tybourne:シンガポールにも拠点を持つ親日シリコンバレー系
  8. Wellington:約140兆円(!)の運用と管理をおこなう巨大資産管理会社
  9. SorosFund Management:あのジョージ・ソロス氏の会社
  10. JS Capital Management:ジョナサン・ソロス氏(ジョージ・ソロスの息子)の会社

図4 Paidyの出資企業一覧(図1の再掲)
図4-1

出典:paidy.com

図4-2

出典:上記3社はPaidyのプレスリリースより2021年3月に新たに登場した出資企業

これらの企業からの賛同がシリーズDまで進み、その先のIPOの上場公開の手立ても並行して進ませるなかで(Financial Timesの報道など)、PayPalへの売却の道を選んだ。MAD MANレポートでも度々お伝えしているが、欧米ではIPOでのExitの比率よりもM&Aにて「結婚」する方が、8割以上と圧倒的に高い(上場だけが会社の価値を付ける方法ではない-図5参照)。

図5 米国企業のExitをIPOとM&Aで比較した比率(圧倒的にM&Aが多い)図5

出典:PwCの調査−cbinsights.com

■Paidyはずっと赤字のままを耐え抜くために

図6は非上場企業であった旧エクスチェンジ・コーポレーション(現Paidy)が、最低限の公告開示をしている決算資料から時系列に抜粋した。電子公告ではバランスシートの限られた情報しか・・・

図6 非上場企業であったPaidyの電子公告のバランスシートから抜粋(一度も黒字になっていない)図6

出典:Paidyプレスから筆者作成

続きはMAD MANレポートVol.81にて

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