Vol.95 風力発電にみる「エネルギーの価値」【前編】目に見え ないものほど見ておく

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10月号の目次>

◎ 資本政策としての飴玉の意味合い「ラーメン売るな、カイシャ売れ」

◎【コラム】飴玉がないChatwork事業の可能性

◎【コラム】1店舗あたり売上6億円×2,600店舗のファーストフード

◎ 風力発電にみる「エネルギーの価値」【前編】目に見えないものほど見ておく

◎ 風力発電にみる「エネルギーの価値」【後編】外資のスキームと権利契約


風力発電にみる「エネルギーの価値」【前編】目に見えないものほど見ておく



図1風力発電の規模を数字で例える場合に登場する「何世帯分/年の電力か」の表記例

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出所) SBエナジー株式会社の説明


日本の各地方における再生利用可能エネルギーの一角「風力発電」に関して、MAD MANクイズ(質問)から始めてみよう。

「問題:日本の風力発電や再生可能エネルギーの分野にて、市民という立場でも事業者という立場でもどの立場からのコタエでも自由なので、2〜3行で何かご自分のご意見を述べてください」

と、無茶振りの問いを出してみた(笑)。

たとえば、図1のような子どもにもわかる解説(風力発電ってどのくらいの発電量なの?)などの「普及させたい側」の説明は数多く見かける。筆者の問いの意図は、事業主やマーケターとして、図1の「風力発電の風車29基」を何らかの通貨の価値に転換して理解を深めようとする試みだ。

たとえば、図1においてざっくりと「事業価値」の規模感を考えられるようになりたい。出資額や運営額に対するリターンや時間軸の考慮を横に置いたとしても、投資をするならざっくりと何億円ほどの規模を表しているのか。

また、世の中へのどんな「良い効果」があるのかも考えたい。風力事業が推進される大きな理由が「良い効果」の部分だとすると、その数字を把握したい。29基の電力(=23,600世帯/月)で安価に暮らせるのか(火力に比べてどのくらい安価なのか)。あるいは「CO2」の量を軸にして、図1の29基のパッケージによって削減される量(が想像できなくとも)は、火力発電所や原子力発電所の何基分の代替や挽回になるとして、ザックリ何個分が回収できるのだろう(と考えてみる)。

■身近なのに意識していない巨大な事業ほど進行している(落とし穴)

今月のMAD MANレポートの「飴玉論」は、資本政策を例として資金(お金)の流通まで関心のアンテナをあげるシリーズだった。

意識していない、理解しようとしていない、苦手でもないのに見逃してしまっている部分にこそ「大きな価値があるぞ」というアンテナに向けて、本章は初公開の「電力エネルギー編」として、その導入部を共有しよう(今後のキテカンも乞うご期待)。

「電力」「発電(送電・蓄電)」「エネルギー」「法令指導の価格」というテーマは、身近な自社事業においても国の行政においても、無視できない=土台であり屋台骨となる事業資産づくりの基本部分として存在する(個人情報のデータよりもエネルギーは価値が重い)。

実は「B/S先見の明」を持つ他国(欧米や中国の外資企業)がキチンと、私たち(日本)の身近にある「無意識」な資産(や領土)をテコにし、細切れで徐々に日本が見えてないB/S資産をお買い上げして、進出している様子がある。(「ノードストローム」の他国間のパイプを心配する前に自国の足元は、、)

「General Electronics(GE)」「Goldman Sachs」「Amazon」など欧米の金融プロだけでなく、中国発の企業も気づいて実働している。経験のある日本の大手商社の社員が日本語ネイティブの事業プロとして雇われて、片棒をかついでいる「金融ゲーム」が見えている。

本件は、「エネルギー分野」のほんのイントロなのだが、水や空気の分野の資産に関しても、外資(欧米や中国)の日本へのB/S進出はさらに進んでいる。これはMAD MANレポート読者と早く共有したい分野だ。

■数ある再生可能エネルギーの一つ「風力発電」

筆者にとっての身近な例として、岩手県気仙郡の山間の住田町にBICP住田オフィスの事業がある(図2参照)。その住田町(と隣接の遠野市)にて、2022年末から風力発電事業が経済産業省の配慮書のプロセスを経て、陸上版で27基を稼働する(予定)。欧米の風力発電事業の成り行きと、その進出度合いを重ねてみると、「そうか、ついにグローバル資本がココにまで来たか」と筆者の関心のアンテナがあがった。


図2:BICP住田オフィスの位置
岩手県気仙郡は盛岡市より南、宮城県のすぐ北に位置する

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出所)Google Map

 

2012年の導入促進の法改正をきっかけに、現在、日本の風力発電タワーは陸上基と洋上基をあわせて約2,600基が稼働している(2021年末)。

※参考: 日本の「再エネ特措法(FIT・FIP制度)及び再生可能エネルギーに係る支援制度」

日本全国で2,600基が「はてさて多いのか少ないのか」すら、判別がつかないのがMAD MANレポート読者の立ち位置としよう。多寡の判断は「基台数」だけではない。たとえば「定格出力」の足し算集計なのか、「陸上と洋上は同じ基数でカウントして良いのか」、さらその先、、と関心のアンテナへのお誘いとする(「里山で暮らせる森林・林業日本一のまち、住田町」へようこそ-図3・4参照)。


図3:岩手県「住田・遠野地区」の風力発電建築の様子(事業主の紹介ビデオより)

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出所)株式会社グリーンパワーインベストメントHPVimeo



日本に限定して、さらに「想定発電の導入量」で計算すると、風力発電の「量」は「北海道〜東北地域」で日本全国の約5割程に及ぶらしい。この北の国エリアには「風の地の利(利益)」があろうと連想される。


図4:岩手県「住田・遠野地区」の風力発電建築の様子(事業主の紹介ビデオより)

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出所)株式会社グリーンパワーインベストメントHPVimeo

 

さらに、住田町のケースは「風力発電の後発組(図4参照)」である分、むしろ20年前の黎明期に「お試しで効率が小さいけど一番乗り」だった頃(例:三重県津市)と比較すると、技術が格段に進歩しているアドバンテージがある。

20年前の風力発電よりも規模や効率化が飛躍的に大きくなり、経済メリットによる満を持しての参入動機を察することができる。20年前の10本分の建設コストの電力が、今や1本でまかなえる理論に突入している。

■事業起案者とその目論見

風力発電への知識がなくとも、この住田町(と遠野市)に事業を持ちかけた側(外資企業)の「利」にかなうB/Sの「山頂」への到達シナリオは、手に取るようにすぐに思い浮かべられるだろう。

これらの事業は公共事業ではなく、「プロジェクトファイナンス(会社としての事業)」によるマイナスリスクを覚悟する民間事業(投資)だ。効率良く回らなければ、「即」撤退する。

■あえて「目に見える」演出ができる事業

風力発電(や太陽光発電)事業の、企画時から設置工事と開始運営のプロセス(足掛けおよそ20年)には、巨大な風車の塔が何十基も出現する(太陽光発電ならば広大なパネルが広がる)ので目に見えやすい(図3・4・5参照)。


図5:風力発電の風車(ブレード)の広さや高さの目安(2017年の資料)
ものすごく大きい建造物の感覚と同時になんだか進化が遅れている感

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出所)ロイター|2017年6月30日の記事

 

風力発電のグルグル回る直径はボーイング747型ジェット機の両翼(約64㍍)よりも大きいブレード(羽根直径103㍍)で、それが27基も回転してそびえ立つ。ブレードの先端の回転スピードは、新幹線級の時速300km級で回り続ける(図5参照)。

人々の関心は「鳥や水や自然の環境はどうなるの」や「音がうるさい」と、すぐに目に見える(聞こえる)側に向くが、ご近所住民の心理としてキニナルのも理解できる。

実は、この「目に見える側」に湧き出た気持ちこそが、「目に見えにくい側」をますます見えなくする原因(仕組み)の一つである。外資は巧妙に(日本ではまだ通じると)それをわかって「演出」している(外資の有名媒体の日本語報道を並べると、担がれている感じが少しみえる)。

その一方で、「この事業に対する行政(市町村)の10年後(本来なら20年後を問いたい)のB/S、山頂はどのあたり?」と事業主(外資)側に問えば、「財政的なボーナスが入りますよ(P/L)」、「全力を尽くしますので」とのコトバが戻ってくる。

これを同じく住民側にも「B/S、山頂はどのあたり?」とぜひ聞いてみよう。事業者側の「言いたくない部分」を鵜呑みにして安心し、ジブンで計算することも関連する数字の想起もないのであればコタエがゼロかもしれない!

さらに、住民側からは「そんなお金のことよりも(とさらに耳をふさいだ枕詞にて)、「水や鳥や草木の自然を守ることが大事だ」、「私達のお金よりももっと大事なもの」という目に見える方向ばかりへ一層偏り「正義の追求」の審議にどんどんと寄ってしまうことが考えられる。このカンタンな単一方向に向く傾向こそが、実は外資の出資の思惑通りで想定内なのだ。

少し酷な話題として、人口減少(過疎化)と高齢化の進む町にお住まいの皆さんが、そのような(外資)事業主の想定シナリオと町と住民のメリット(良いこと、得られること)とデメリット(町の住民が差し出すこと)の「ざっくりとした天秤」でさえも、その理解や納得には・・・

続きはMAD MANレポートVol.95(有料購読)にて

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